
MCカートリッジと昇圧トランスのインピーダンスのマッチングについてしばしば質問を受けます。
ネット検索すると’カートリッジよりもトランスの入力インピーダンスが大きくなければならない’
とか’微々たる問題で無視できる’とかいろいろな説が氾濫していますが具体的な音質への影響に
至っては皆無です。
特殊な回路を除きMCトランスでは小電圧,低周波の信号を扱うので、無理にインピーダンスを
合わせる必要はないと言うのが一般的な常識です。音質とは無関係。
同一メーカーのカートリッジとトランスはインピーダンスを合わせて音作りをしています。
合わせることで音質が良くなることはありませんが商品としての統一性の問題です。
設計上ではカートリッジの出力インピーダンスは低く、トランスの入力インピーダンスは高くと
いうのがメーカーの基本のようです。
銘品と言われる古いトランスで米国の’ウエスタン、DUKANE、ピアレス、UTC、コッター’
、英国のパートリッジ、独逸のノイマンなどのアンプのインプットトランスを昇圧トランスとして
使いますが、主にマイク用トランスで使われていた物。入力インピーダンスは50〜600Ω。
カートリッジなど無い時代の物でマッチングは考えていません。
音が良いから使うだけです。また、メーカーによって使う材質が違うので音質が変わります。
JSトランスのみはオルトフォンのカートリッジ専用として3オームの設計になっています。
パートリッジのようにインピーダンスの切り替え(Low,High)があるトランスもあります
がこれは昇圧比(倍率)を合わせるためのものです。
アンプの出力トランスを入出力を逆にして昇圧トランスとして使うこともありますが、この場合
入力インピーダンスは150〜800Ωと高くなります。ジャズに最適なALTEC-15095
を例に挙げるとインピーダンスは入力:150Ω、出力:15KΩとなります。
音質はカートリッジ、昇圧トランスなど入力系の相性よりもアンプ、スピーカーとの相性の方が
はるかに重要で影響も大きく、インピーダンスのマッチングは枝葉末節です。
下表を見てわかるようにインピーダンスはバラバラです。
1.MCカートリッジの出力インピーダンス
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MCカートリッジ
インピーダンス |
モデル例 |
オルトフォン |
3Ω |
SPU,MC30 |
DENON |
40Ω |
DL103,301 |
A・テクニカ |
10〜40Ω |
AT33,ART7 |
SUMIKO |
135Ω |
BLUEPOINT |
GOLDRING |
100Ω |
EROICA |
SHELTER |
11Ω |
501 |
2.昇圧トランスの対応インピーダンス
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昇圧トランスの
入力インピーダンス |
モデル例 |
オルトフォン |
3〜60Ω |
ST7,T30 |
DENON |
3〜40Ω |
AU320 |
A・テクニカ |
2〜17Ω |
AT3000 |
シェルター |
15Ω以下 |
M411 |
ウエスタン |
30Ω |
618B |
ALTEC |
150Ω |
15095 |
DUKANE |
50〜300Ω |
3A55、3A65A |
LANGEVIN |
150Ω |
406A |
JS |
3Ω |
41,6600 |
3.MMカートリッジとライントランスの対応
ライントランスはCDの音質改善にCD〜アンプ間で使われますが、MMカートリッジの音質改善
にも使うことが出来ます。通常は外付けフォノイコ〜アンプ間又はプリ〜パワー間で使いますが
昇圧トランスと同じようにMMカートリッジに直結しても使えます。
インピーダンスは100Ω〜1500Ω程度。入力、出力に差がある場合は昇圧します。
昇圧が5倍程度のライントランスはMCモノラルの昇圧トランスとしても使えます。
4.MC&ライントランスと音質
入出力が低インピーダンスのトランスは音が柔らかく、高インピーダンスは締まった音になる傾向
があります。トランスの音質はトランスの’コアと巻き線の材質’で決まります。
銘品と言われる50年前の古いトランスは特性は良くありませんが材質が良いので高音質。
近年のトランスは特性(周波数、ダイナミックレンジなど)を重視する傾向にありますが、特性が
良いほど音が痩せて冷たくなります。国産トランスがこれに当てはまります。
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