ライントランス
ライントランス・MCトランス・音工房


      ライントランス        SME 

音質の良し悪しの判断は人それぞれで一概に決めつけられません。音に対する感覚的なものでアナログ
の世界です。メーカーの立場と使う立場では全く違いますし、千差万別ある装置類の選び方もブランド
か又は特性で選ぶ以外に方法がありません。
ショップで試聴するのが重要。可能であればコンサートや
ライブの生演奏を聴いて音作りの目標を立てる
のが重要です。オーディオの音質がコンサートやライブ
と違うのは圧倒的な情報量の差です。
情報量とはわかりやすく定義すると以下の3点となります。

  1.楽器の定位  → すべての楽器がどこで鳴っているかがわかる。
  2.音場感    → 広がり,奥行き,空気感,ホール感,ライブ感 がある。
  3.音質の3要素 → 潤い,温かみ,響き がある。

1.楽器の定位

  レコードとCDの音が左右のスピーカーから出てくるとき高域,低域の全ての音がダンゴ’状態’
  
になることがあります。その原因は
’楽器の定位’不足です。
  上記の3項目は相互に関連しているために優先順位は付けられませんが’楽器の定位’を改善する
  事が第1ステップ(最優先)となります。併せて’音場感,音質の3要素’も改善。


  
1)クラシックの楽器の定位(オーケストラ)
    前列には 左から第1バイオリン,第2バイオリン,ビオラ,チェロ,コントラバス
    中列には フルート,オーボエ,クラリネット,ファゴット,ホルン,トランペット,
         トロンボーン
など
    後列には パーカッション(ティンパニー,バスドラム
など)

  
2)ジャズの楽器の定位
    
トリオ(3人編成),カルテット(4人編成),クインテット(5人編成)
    ・・クラシックでも同じ呼称

    ドラムとベースはいずれも後方に配置されますがピアノトランペット,サックス,
    バイブ,ギター,トロンボーン,ボーカルなどがセンターに入って編成されます。
    ビッグバンドではさらに編成人数が多く十数人に及びます。

2.音場感
    ’
音場感の作り方’を参照。

3.音質の3要素

  人の感性に訴える音、リラックスできる音が医学的にも心身のバランスを整えるそうです。これが
  感動に繋がるのでしょう。
  音質の3要素はこの感動を生み出すためのキーとなります。音場感とは別次元の課題です


  
1)
潤いの出し方
    女性のしっとりとした肌と同じイメージの音質 → 柔らかい音質。適度の柔らかさが必要です。
    潤いがない音とは辞典によると枯れた音となります。昇圧トランス,ライントランス,ケーブル
    フォノイコで調整します。

  
2)
温かみの出し方
    音には寒い音と温かい音があります。寒い音は緊張をもたらし、温かい音は心がいやされます。
    カートリッジの選定で行います。国産のカートリッジは大半が特性重視の寒い音です。暖かい
    音のカートリッジは’
なまった音になりやすいので選定に注意。

  
3)
響きの出し方
    弦をたたいて出すピアノの響き。その響きには余韻が必要です。ペダルを踏むと無くなります。
    管球アンプの倍音再生の良さが音の響きを作ります。真空管とトランスが作り出す絶妙な響き
    真空管の選定,出力トランスの選定で調整。トランジスタアンプは過去に3機種使用も不可。

4.音質を決める順序

  1)初めにスピーカーを選定 → 音質の傾向が決まる。
  2)カートリッジを選定   → クラシックかジャズ・ボーカルかがきまる。
  3)プレーヤーを選定    → 音の響きが決まる。
  4)アンプを選定      → 管球かトランジスターかで音の倍音再生が決まる。
  5)ケーブルの選定     → 楽器の定位、音源の分離が決まる。
  6)トランスの選定     → 音質の音場感が決まる。
  7)フォノイコの選定    → 外付けフォノイコに変更。音質の改善。

5.音質を決める注意事項

  1)周波数特性を重視する  → 音質が硬くなる。   → 寒色系の音
  2)周波数特性を
抑える   → 音質が柔らかくなる。 → 暖色系の音
  3)3,4WAYスピーカー  → クラシック向き    →
フラットな帯域。
    2WAYスピーカー   → ジャズ・ボーカル向き →
中域重視。
  4)MCカートリッジ    → クラシック向き
    MMカートリッジ    → ジャズ・ボーカル向き
  5)DD方式のプレーヤー  → 音が硬くなる。平面的な音。
    ベルト方式のプレーヤ  → 音が柔らかくなり音場感が出る。
  6)管球式アンプ      → 音が柔らかく音場感が出る。倍音再生が優れている。
    トランジスターアンプ  → 音が締まって音場感が出にくい。

  近年の装置は周波数特性重視のものが多く、
B&W スピーカーは〜50,000Hzですが中高域が強く
  耳につきます。カートリッジでは
100,000Hz以上のものも存在。人の耳は〜20,000Hzまで
  と言われていて、これほどの高域再生は必要ありません。メーカーの技術誇示と販売戦略です。
  銘器と言われるタンノイは
〜20,000Hz、JBL に至っては〜15,000Hzです。
  高域が伸びるほど重要な中域が痩せて聴こえ平面的、単調な音になります。
  特性が良いほど高域が伸び、反面最も重要な中域が痩せて聞こえます。ライントランスで調整。

6.管球アンプの条件

  管球アンプは’音の倍音再生’に優れ’潤いがある,温かみがある,響きが良い’の音質の3要素
  がそろっています。トランジスターアンプにはありません。
  最近の管球アンプの真空管はほとんどが中国製で音質が極端に悪く、欧米の
OLD 管への交換が
  必須です。中国製アンプは論外。スピーカーの大きさでアンプ出力を決定。

7.楽器の定位,音場感,音質の3要素 の改善方法 

  装置をそのまま組み合わせても音は出ますが満足な音にはなりません。
楽器の定位を改善する
  ことは’音場感,音質の3要素’も併せて改善することになります。
  クラシックとジャズでは奥行き感の出し方が逆になります。クラシックは奥へ、ジャズは前へ。
  
現在の装置で
以下の改善を進めます。

  1)スピーカーの調整。
    好みで低域を増やすのは別としてスピーカーは低域が出過ぎないこと。中高域まで影響して
    
定位が不明瞭になります。ジャズのベースはライブで聞くとかすかに聞こえる程度。
    クラシックではコントラバスはほとんど聞こえずビオラが十分聞こえ、後列のティンパニー
    バスドラムが明確にわかる程度に押さえる。
    アッテネータとアンプのトーンコントロールで低域を微調整する方法とライントランスで
    低域を増減して調整する方法があります。但し、調整しすぎると重要な中域に影響します。

  2)カートリッジの選択  
    音質が全く変わります。クラシックとジャズ・ボーカルで異なります。
    クラシックは弦楽器の再生が中心で滑らかさと柔らかさが要求されます。また後方に展開
    する奥行き感を出すために’
MCカートリッジ’が適しています。

    小編成のジャズではトランペット、サックスの吹き出すような迫力が重要。ボーカルでは
    バックの演奏に埋没せず浮き出る必要があり、’
MMカートリッジ’が適しています。
    ビッグバンドのジャズでは編成が大きいのでクラシックと同じ選定が合います。
    
MC、MMとも多くの種類があり選択に要注意。

  3)ラインケーブルとスピーカーケーブルの交換 注1) 注2)
    ウエスタンのブラックエナメル単線(20AWG、22AWG綿巻ワックス仕上に変更する。
    楽器の定位と奥行き感が格段に向上します。直径
mm(被服込み)の極細ですが市販
    の高特性ケーブルは足元にも及びません。材質の差です。
    最近の
6N、7N、8N
OFCなど特性の良いケーブルは全て撚線で高域寄りの平面的な音質。
    奥行き感が出ません。単線と撚線では音質が全く違います。
    
スピーカケーブルは片側3m以下にする。長いと音場感が薄くなります。
      
’ケーブルの選定’を参照。

  4)
MCトランス、ライントランスの利用 注3)
    アンプの音質は回路ではなく出力トランスによって決まります。国産トランスは周波数や
    ダイナミックレンジなどの特性数値が良いことが特徴。音質が良いことではありません。
    技術志向の日本では’音質=特性’と言う概念が定着しています。数値で表せない感覚的
    な’音場感’などの音質は無視されます。
    
楽器の定位には奥行き感が必要で昇圧トランス,ライントランスで音場感を出します。
    ウエスタン系のトランスを使うと音の表情が変わります。
      ’
ライントランスの効果’を参照。

  5)外付けフォノイコの利用
    アンプ付属のフォノイコは音質が悪くおもちゃ程度の音質。高級アンプにはフォノイコが
    付属していません。自由に外付けで選択できるようになっています。
    また、高価なフォノイコは回路が複雑で価格の割には音場感が出ません。選定に注意。
    
MC入力が付属したフォノイコはヘッドアンプが内蔵されていますが音質は不可。
    ’楽器の定位’が最優先となるので補正カーブは’マランツ型’を選定します
    試聴室のフォノイコ4台はすべてマランツ型でMM入力のみ。
      ’
フォノイコの選定’を参照。

  6)その他(レコードマット,管球アンプの真空管交換)
    マットの材質で音質が大幅に変わります。クラシックとジャズではマットを変更。
      ’レコードマット差’を参照。
    最近の管球アンプの真空管はほとんどが中国製ですが、音質が極端に悪く、欧米のOLD
    への交換が必須です。
中国製アンプは論外。’ふくよかさ’がない。
    ロシア管、スロバキア管は音質の差が大きいのでアンプに合う合わないがあります。

8.メールでの感想

  
注1) 直径2mm弱の細いケーブルでこれほど音質が変わるとは驚きです。径が太い
     
6N SPケーブルを使っていましたが激変に感涙です。(’20/10/02

  
注2)  SP ケーブルであんなに音が変わるものなんでしょうか? 本当にびっくり。
     ビル・エバンスなどのピアノの高音の煩さが、完全に消えました。
     弦の音も綺麗になり、変な付帯音も、無くなりました。(
’21/08/10

  
注3)  ライントランスは初めてですが MM カートリッジ〜アンプ間で使いました。
     音がまろやかになり立体感が格段に出ました。奥行き感が抜群。タンノイで
     クラシック、ジャズ両方が聴けます。 (
’09/05/15