ライントランス・MCトランス・音工房
ジャズのセッティングはクラシックより難しいと言えます。
音場感(1.広がり感 2.奥行き感 3.空気感 4.ホール感 5.ライブ感)はクラシックと
同じです。ビッグバンドとボーカルのバックの再生は「ホール感」が必要です。
ボーカルのバックにはオーケストラが多いため。
小編成のJAZやボーカルは目の前で演奏している「ライブ感」を再現させなければなりません。
ジャズの再生には以下の点を留意する必要があります。
1)小編成のジャズとカウントベーシーのようなビッグバンドでは再生方法が異なります。
後者はクラシックと同じ再生です。ボーカルの多くは後者となります。
2)楽器の音が明確に分離する必要があります。’楽器の定位とは’を参照。
ほとんどのシステムはバックのピアノ、ドラム(特にブラシ)が埋没して聞こえません。
3)ボーカルはバックの演奏よりも前面に出なければなりません。
ジャズを聴くほとんどのシステムはビッグバンドはうるさくて疲れます。セッティングの間違い。
4)音作りはピアノとサックスの再生を基準にします。ピアノのアタックとコロコロ感。
テナーサックスのかすれた低域と”ブリブリ”感。
1.スピーカーの選定
過去に JBL のパラゴン、ハーツフィールド、エベレストを試聴したことがありますが、期待した
とは裏腹に失望したことがあります。ブランドや価格で決めると失敗することが分かりました。
まずは実現したい’音’を明確にすることが第一です。例えば’ピアノの響き’’サックスの輝き’
’ドラムのブラシ音’など。これとスピーカーの特徴を比較して選定します。
1)最近の高価な特性の良いスピーカーはジャズの泥臭さがでません。
1980 年代以前のスピーカーに最近のアンプを組み合わせるとスピーカーの欠点が表面化します。
同年代の組み合わせが必要です。特性で決めると失敗します。メーカーが違えば音の傾向はかなり
異なりますが、同一メーカーであればモデル間の差はあまりありません。
やはり米国製が中心になります。JBL、ALTEC、JENSEN、MCINTOSH、E-VOICE など。
欧州系のスピーカーは弦楽器の再生には適していますがジャズ・ボーカルには適していません。
最近ではタンノイでジャズを聴く人がかなりいます。セッティングによっては有りかもしれません。
ただし、音が前面に出てこないという悩みはあります。
2)JBL は中域の音は澄んできれいですが、’ドンシャリ’の音で高域、低域の処理に苦労します。
音質は平面的で多くが苦労しています。特に低域は’ボンボン’型の音。
現在、試聴室の4301 を調整中ですが、ネットワームのコンデンサーを交換。高域と低域が強すぎ
最も重要な中域が薄まっていたドンシャリ音がフラットな音にになり滑らかな弦楽器と締まった
低域が再現。
WE-111Cトランスを入れると低域が締まりかなり音場感が改善。
3)ALTEC は音が前面に出ますが使いこなしに苦労します。’コロナ’(高域コーン型)程度の
中型をうまく調整するとウエスタンに近い音が出ます。
但し、ボーカルではバックのオーケストラの再生は困難。
使いこなしが難しく、ほとんどの方が不満を持っています。拡声器の音になりがち。
4)JENSEN はもともとギターアンプ用のスピーカーとして使われていました。
JBL と ALTEC の中間に近い音でジャズにもクラシックにも使えます。但し、入手が困難。
5)B&Wとジャズ
英国製の B&W は独特の構造と音質で周波数特性も〜50,000Hz とずば抜けて高い。
最も小型のCM1を試聴室で鳴らしていますが JBL とは違い、奥行き感のある見通しの良い
澄んだジャズが聞こえます。高域が強く出るのでソースによっては耳障り。
50 年代のモノラルジャズは当時の雰囲気とは異なり近代的な音で鳴ります。
中高域に特色があり高域をライントランスで抑えてやるとBEST。
B&Wはカートリッジに敏感でその選択が重要です。
2.カートリッジの選定
年代によって選択するカートリッジが異なります。
50〜60 年代のジャズ、ボーカルではスピーカーとの相性を考える必要があります。
当時の雰囲気をよく再現し、ボーカルやサックスなどは厚みと温度があり楽器の輝きを際立たせて
前面に飛び出してくる様な音のカートリッジ。
70 年代以降のジャズではデジタルを含む高性能な録音のためクラッシック用の性能が必要。
’カートリッジの選定’を参照。
3.プレーヤーの選定
音の品位と立体感を決めます。
1)ベルトドライブがベストです。
DD 方式は響きがなく音場感が出ません。感動がわかない音。
2)国産のアームはどれも画一的な音で響きが無く硬い。。
3)カートリッジは MM の方がジャズの泥臭さが出ます。
4)MC カートリッジは音の繊細さは出ますがトランスを選びますので注意が必要。
50 年代のモノラルジャズに特性の良い近年のカートリッジは厳禁です。
5)ターンテーブルマットはゴム系、金属系は不可です。’レコードマット差’を参照。
4.アンプの選定
’音の倍音再生’に優れている管球アンプが条件となります。
過去に3種類のトランジスターアンプを使いましたが、もてあまし短期で放出。
1)パワーアンプで出力管によってはジャズに合わない場合があります。管球の選択が重要。
出力トランスで音が決まります。
2)プリアンプは特性の良いアンプが必要です。トランス出力にすると格段に音がよくなります。
増幅管、整流管、出力管など中国製の真空管は極端に音が悪く避ける必要があります。
3)フォノイコはアンプとの相性がありますので使ってみなければ判りません。
試聴室の経験では高価なフォノイコは音が痩せてジャズには合わないようです。
5.ライントランスの利用
1)ライン(リピート)トランスを入れると音がリアルになります。
JBL、ALTEC には ウエスタン系のトランスが最も合います。
2)カートリッジ(モノラル盤)によってはトランスを入れない方が良い場合があります。
比較試聴で決める。
6.モノラル盤とステレオ盤の再生
50〜60 年代 :録音帯域=30〜15 KHz,ダイナミックレンジ=60 db、モノラルが中心。
70 年代以降 :録音帯域=20〜20 KHz,ダイナミックレンジ=98 db、ステレオが中心。
ステレオ盤が出始めたのは’58 年。マイク2本で左右分離するだけの単純な録音で録音機材も
それほど特性が優れたものではなかった。
’70 年代以降になると高性能な録音、再生装置やデジタル録音の出現でレコードの概念が激変。
歴史を考えると年代の古いレコードと新しいレコードでは再生の仕方が異なるのが当たり前です。
古いものは古いもので新しいものは新しいものでが鉄則。
しかし、装置全体を2重に持つのは経済的に不可能で、カートリッジ(入力)とライントランス
(出力)で調整するのがベスト。
50〜60 年代のレコードでジャズ、ボーカルをうまく鳴らすには特性の良い近年のカートリッジ
は厳禁です。モノラルでもステレオでもテナーサックスで音質の確認をします。
生を聴いた時の独特の吹き出すような「ブリブリ」感や「つぶれた、かすれた低域」音。
空気を伝わってくる生々しさが基準。空気の震えを再現。
|