1.CDの歴史
CD は’82年ソニーとフィリップスの共同で開発されました。統一規格はサイズ 12cm、16ビット、
録音時間は最大74分。ベートーベンの第9交響曲が1枚に入るようにカラヤンの要請で決まったよう
です。その後、20ビット、24ビット と進化してきました。
レコードはソーステープ、カッティング、回転数、再生時のカートリッジ、アーム、プレーヤーなど
アンプに入るまでの過程で音質が変わる要素が多数あります。CD はディジタルで且つ規格が決められ
ており、全てが画一的で音質は CD プレーヤーの再生回路のみで決まります。
2.CDの音質
CD は帯域も 30〜15,000Hz のディジタル信号。これ以外の音楽信号はカットされています。
音場感という概念はなくCD プレーヤーからアンプに直接音源を送り込むだけの話です。これが CD
の音は硬くてきついという印象になっています。一音一音がはっきりしていて音のあいまいさがなく
一聴して歯切れが良いと言う印象になりますが、しばらく聴き続けると味気なく、疲れます。
CD プレーヤーによって音質が若干異なるのは回路設計の優劣によるものです。
20ビット、24ビット CD では 16ビット でカットされた音楽信号を余裕ができた空間に刻むことが出来
るようになり、これで音場感を再現しています。試聴すると確かに音源の奥行き感と広がりが増して
いるのがわかります。
3.レコードの音質
レコードの音質はソーステープの音質に左右されるものの画一的な規格はなく製造過程の技術によって
音質が改善されています。(ディジタルカッティングなど)。また、20,000Hz 以上の音も録音さ
れていますので再生装置次第で音質が豊かになります。
同じレコードでも(米)RCA リビングステレオと(独)グラムフォンとの音質差はどこから出ている
のかは定かではありませんが、録音テープのトラック数の差とか、録音機材の差と言う話もありこれ
ほどの差は CD ではあり得ません。 ’レコードの音質差’を参照。
4.CD の音質改善
レコードではアンプに入るまでの間の機材変更でいくらでも改善できますが、CD ではそれが出来ま
せん。唯一の方法は CDプレーヤー〜アンプ間にライントランスを入れることぐらいです。
この唯一の方法でレコードに劣らず生に近い音が出せることはあまり知られていません。もともと
CD はディジタル録音ですので音質の経年劣化は全くありません。この点はレコードに優る利点です。
CDの音質改善に使うトランスはウエスタン系に限られます。下記、試聴室での例を参照。
合わせてケーブル類も全て変更します。
5.ライントランスの重ね使用
CD プレーヤー〜アンプ間にライントランスを入れることは常態化していて、聞きやすくなったとか
ノイズが無くなったとかそれなりの効果は出ていました。
CD でレコードみたいな音場感を出せるとは思ってもみないことです。
1)トランスの選択
トランスであればなんでも良いわけではなく選択を誤れば逆効果になります。
推奨のライントランスはウエスタン系に限られます。国産トランスは不可。
ウエスタン、DUKANE,Langevin、などウエスタン系。
2)トランスの組み合わせ
第1ステップは CD の固い音を柔らかくしてレコードの音に近づけます。音場感を出すため。
ライントランスは複数組み合わせることができます。これで音質が劣化することはありません。
それぞれのトランスの特徴が合わさって音質を調整することが可能になります。
試聴室では DUKANE3A80A と 英国ウエスタン WE4001 の組み合わせです。
第2ステップは JENSENなどの高域改善で微調整します。
例)試聴室 ウエスタン WE4001 : 音を柔らかくする
DUKANE 3A80A : 音場感を出す
(JENSEN JT-MB-C : 高域のザラツキを改善)ソースによって使用。
’ライントランスの効果’を参照。
3)ラインケーブルでの調整
ラインケーブルでも音質が変わりますのでこれで調整します。長さは1m程度×2本。
線種は近年の特性が良い OFC、7N、8N などのメーカー製撚線は不可。
ウエスタンのブラックエナメル単線20AWGを使用。
当然、SPケーブルもこのブラックエナメル単線を使用します。
4)アンプでの補正
前項まではトーンコントロールをニュートラルで音質調整します。
スピーカーはメーカー、モデルによって音作りが違いクラシック向きジャズ向きがあります。
トランスでは調整しきれないスピーカーの高域と低域の強さをアンプのトーンコントロール
で微調整します。音場感を損なわない程度で。
6.CDの音質(改善後)
WADIA-6は中高域の解像度が他のプレーヤーと比べて格段に良くアンプと直接接続した場合、迫力
ある音が飛び出してきます。音場感も申し分なくありますが、CD特有の高域の硬さが出て耳障りな
音が少なからず残ります。高域の改善が必要。
CDの録音周波数は〜15,000Hzですので10,000〜15,000Hzの帯域を押さえる必要があります。
ライントランスは中高域の改善。ラインケーブルは音を柔らかくするために使います。
試聴室のメインシステムを使用。
・スピーカー : ALTEC 9862
・CDプレーヤー : WADIA-6
・管球アンプ : ALTEC 1567(プリ),1570(パワー)
・ライントランス : WE 4001、DUKANE 3A80A(CDプレーヤーとアンプ間)
・ラインケーブル : ウエスタンブラックエナメル単線(1.5m)
・試聴レコード : 下記は試聴室で試聴用のリファレンスとして使用しています。
随時追加予定。
1)フランクプゥルセル/007ゴールドフィンガー/ロシアより愛をこめて(ワーナー)
007シリーズでは最も有名な2曲です。グランドオーケストラの出だしはゴールドフィンガー
では迫力ある音が迫り、ロシアよりではゆっくり流れるテンポで音場感があり、高域のキツ
さ粗さは全く出ません。解像度と柔らかさを兼ね備えた音はレコードより音が良い。
2)ウイントン・マルサリス/スターダスト(CBSソニー)
ストリングスをバックに奏でるトランペットは特有の吹き出す音がスローテンポで出てきて
迫力があります。ストリングスの構成はビオラ,チェロ,オーボエ,ファゴット,チューバ,
ホルンで12人。トランペットとストリングスは前後に離れて奥行き感があります。
ビオラ,チェロの弦楽器の響きが素晴らしく定位が明確。オーボエ,ファゴットの木管楽器も
柔らかさが際立ちます。
3)プロコフィエフ/ピーターと狼(RCA)
デビットボーイのナレーションに沿って動物役の楽器が次々と奏でられます。ホルン(狼)
オーボエ(あひる),クラリネット(猫),フルート(小鳥),弦楽合奏(ピーター)など。
楽器が単独で次々に出てくるので再生はかなり難しい。音色が違う楽器の立体感の問題。
ライントランスの効果が出てホルンやオーボエでは奏者の息使いが感じ取れます。
4)バッハ/トッカータ&フーガ(DENON-PCM Digital)*
バロックで有名なバッハのオルガンは重低音が破綻することなく音場感を持って響きます。
レコードの同タイトルと比較すると全体的にクリアで音の締りが見られます。音の柔らか
さではレコードに劣りますがパイプオルガンの高、低域の強調、響きは勝ります。広がり
を持って前面に飛び出してくる重低音は逸品。