1.JBLの特徴
JBLにはモニターシリーズと民生用があります。前者は 4000 シリーズを代表にスタジオ仕様で音質
も色付けがなく忠実に再生し帯域もフラット。後者は市販されているLシリーズに代表される民生用
で音の傾向も違います。JBL スピーカーの特徴は全機種において ”ドンシャリ”型になりやすい。
モニタースピーカーはスタジオで各帯域の音を確認するのが目的で音楽を聴くのが目的ではありません。
業務用目的でなければ民生用のスピーカ―の方が適しています。
1)低域再生が強い :20cm口径でも強くアンプで絞る必要がある。
2)高域再生が強い :特に弦楽器は強すぎて聴き疲れする。SPのアッテネータで調整必須。
3)音色は中域が澄んできれい :高域調整出来れば他に類を見ない音色。
4)音場感特に奥行き感が出ない。:平面的な音場になりやすい。
2.JBLの再生
使用装置:
スピーカー :JBL-4301(アルニコ)
カートリッジ :オルトフォンSPU-マイスター,SPU-#1、MC-20
シュアM3D、M7D、M8D、GEバリレラ
プレーヤー :トーレンス TD-111
管球アンプ :ALTEC1567+1570
昇圧トランス :DUKANE3A55
ライントランス:DUKANE3A80A、WE111C、JENSEN、UTC
フォノイコ :外付けMarantz7型
レコード :フランク・プールセル、ビング・クロスビー、モーツアルト40、41番、
バッハ・オルガン、マイルスデヴィス、ソニーロリンズ、
ジャズモノラル盤(プレスティッジ、ブルーノート)
1)低域再生
JBL の低域は弾むような音質で生の音とは少し異なります。聞き取れない程度にアンプで絞り
込まないと中高域まで影響してしまいます。クラシックではコントラバスの沈み込むような
重低音は再生できません。ジャズのベースも弾み過ぎ。
以前、L26(2way) を購入した時は低域の音に悩まされアッテネーターのコンデンサーを交換
しても改善されず2週間で手放した経緯があります。それほど JBL の低域はくせもの。
ジャズではベースソロ以外ほとんど聞き取れないベース音が前面に出てきて生とは程遠い。
これを如何に抑えるかがポイント。
バスレフダクトの調整
JBL は全てのモデルがバスレフ方式で低域を増やしています。4301 も同様。
市販のスポンジでバスレフダクトの大きさを調整すると低域の音量が変わってきます。
全開で’ボンボン’音、全閉で’ぼそぼそ’音、20% 開放にするとベスト。
2)高域再生
アッテネータがフラットの位置では高域が強すぎてクラシックには不適。
−3程度に絞る必要があります。ジャズのサックスやトランペットでは高域が強い方が音の輝
きが出ます。バックがオーケストラのボーカルは絞った方が聴きやすくなります。
ソースによってはアッテネータを調整し、さらにアンプのトーンコントロールで調整が必要。
3)音場感
アッテネーターを(ー3)に絞りアンプのトンコントロールを高低ともフラット。この状態で
クラシックを聴くと、聞きやすくなりますが奥行き感が薄い。
スピーカーケーブルをWEのブラックエナメル単線に変えると低域の音が締まり奥行き感が出
てきます。低域の”ボンボン”音もかなり改善。
まだ、沈み込むような低域とは程遠い。ケーブルによる差異は大きい。
低域の再生音が中高域にも影響して調整に苦労します。
4)コンデンサー交換
ネットワークのコンデンサーの寿命は 10 年程度と言われています。コンデンサーの劣化が
音質に影響。ほとんどのスピーカーはそのままで使われていますが本来の音ではありません。
4301 のコンデンサーは片側2個、合計4個が使われています。交換するためスピーカーを
分解。DAYTON(米国)に交換。ドンシャリ音がフラットな音にになり音質は激変。
試す価値はあります。メーカーにより音質が異なるので選択に要注意。
5)カートリッジの選定
スピーカーの高域特性が強いためMCカートリッジは昇圧トランスとライントランスの選定
が重要となります。ジャズに限ると 50 年代のモノラル、70 年代以降のステレオでは
カートリッジが異なります。 詳細は’カートリッジの選定’を参照。
6)ライントランスの効用
低域を改善するためライントランスの利用で効果があるか?。奥行き感があり低域を締める
トランスであれば可能性があります。選定を WE、Dukane、JENSEN、Langevin、JS の
ライントランスで確認。WE-111C、Dukane3A80(A)、JENSEN、UTC が低域改善で最も効果的。
Langevin、JS はクラシックには合うがジャズには迫力不足。
ライントランスは JBL では重要な要素となります。
7)ジャズの再生
JBL =ジャズのイメージがあり JBL サウンドとして有名ですがステレオでビッグバンドを
聴くと心地よい音が出てきます。
特に50 年代のモノラルジャズなどは録音特性と再生特性が合っていれば大型システムに優
る迫力ある音になります。JBLのスピーカーではこの迫力ある音はカートリッジで調整。
8)クラシックの再生
JBL サウンドは ALTECの対角にある音質。心地よい音ですのでクラシックも再生可能です。
・70 年代以降のステレオのクラシック再生ではカートリッジで大幅に異なります。
高域と低域が強すぎていたのがコンデンサー交換でフラットな音質になり滑らかな弦楽器と
締まった低域が再生。
・交響曲、協奏曲などフルオーケストラの曲も破綻することなく再生します。
しかし、クラシックでは奥に展開する奥行き感が必要ですが JBL ではこれに苦労します。
9)アンプの選定
マッキンのアンプは音の重心が低いので JBL の定番となっていますが、音場感はあまり出
ません。アンプは倍音再生に優れている真空管が適しています。トランジスターアンプは
合わず、JBL の欠点である高域再生で”シャリシャリ”音がきつくなって音域のバランス
が取れません。アンプは高域・低域のトーンコントロール付が必須です。
10)中国製のJBL
当時話題になったJBL-Ti-1000(32 万円)は欧州設計、香港生産で高価なモデル。
音は本来の JBL とは違い、欧州のスピーカーそのもの。ジャズ=JBL のイメージはなく
クラシックに適しています。同じ頃に JBL のユニットは台湾製との噂があり真意は不明。
また近年の JBL は台湾製、香港製、メキシコ製もあり往年の JBL とは全く異なる製品と
言えます。音質もかなり異質で注意を要します。
3.JBLとカートリッジの音質差
1)シュア M3D,M7D(MM) の場合
・ウエスタンの柔らかさが加わりイルカが目前に居るかのようなホール感たっぷりの音響。
低出力アンプには適しているようです。
高域が柔らかくなるので 4301 のアッテネーターを’-3’から’±0’に変更。
アンプで高域を調整。通常のシステムでは’M3D’で十分です。
・WE111C(146K)、 DUKANE3A80A、JENSEN、UTCのいずれかを組み合わせる
と音に奥行きと張りが出てきて音場感がUPします。
イルカ’ボヘミアの森から’ではバックのオーケストラからボーカルが浮き出てきます。
使う管球アンプによって組合わせるトランスも変わります。
2)GEバリレラ(MM VR22ステレオ、VR2モノラル)の場合
・WE111C(146K)、 DUKANE3A80A、との組み合わせでは高域に若干の
張りがありますが音場感豊かな音質で JBL にはよく合います。
イルカ’ボヘミアの森から’ではバックのオーケストラからボーカルが浮き出てきます。
弦の再生もきつくならず明快さが増します。
ソニーロリンズのサックスはシュアM3D よりも鋭さが増して聴き入ります。
ジャズ・ボーカルの再生には適したカートリッジと言えます。
50 年代のモノラル再生にも適しています。音源の古さは出ず生き生きとしています。
VR22(ステレオ針)は音の傾向はVR2モノラルと同じですが、70年代以降の特性
の良いレコードにも対応でき、市販のカートリッジとは次元の違うジャズ、ボーカルを
再生します。歯切れのよいサックス、トランペットの音は逸品。
クラシックでは高域の強さが災いして音場感が出ません。滑らかな弦の再生が苦手。
3)SPU-#1(MC) の場合
・WE111C(146K)ライントランスを使うとウエスタンの柔らかさが加わりM3D(MM)
の場合と全く同じ。音場感豊かでバックのオーケストラからボーカルが浮き出てきます。
SPUのエイジングには 100 時間以上は必要です。
4)SPU-マイスター(MC)の場合
・WE111C(146K)ライントランスを使うと音の次元が異なります。
昇圧トランス 3A55 との組合わせで最高の音質。
DUKANE3A80A、JENSEN では滑らかさが増します。
・音場感は’M3D’より上でソニーロリンズではサックスが浮き出てきてベース,ドラム
は後方で埋没することなく明確に響きます。
ハイグレードのシステムでは SPU-マイスター,リファレンスをお勧めします。
5)オルトフォン MC-20(MC) の場合
・WE111C(146K)、3A80A、JENSEN、UTCとの組み合わせ。
・MC-20 特有のやわらかさが特徴でイルカのボーカルもバックの演奏がかぶることが
無く明確に分離しています。音場感は十分。M3D とは対照的な音。
MC,MM どちらのカートリッジを選ぶかは個人の好みによります。
・ソニーロリンズはサックスの鋭さが若干やわらぎ聴きやすくなります。
・クラシック MC特有の弦の再生が素晴らしくピアノ協奏曲ではピアノとオーケストラ
が明確に分離して音場感と楽器の定位は抜群。低域は JBL 特有のふくらみ音があり
ますが、アンプで絞れば問題無し。
6)ライントランスの位置
トランスを複数組み合わせる場合にはウエスタンは最終段アンプ側に置く。
MCトランスを使う場合は必ず間にフォノイコを挟む。MCトランスと直結すると音が歪
む場合があります。ライントランスはシステムでその効果が変わります。