1.JBL-LE8T
シリーズには LE8(初期型)、LE8T(アルニコ)、LE8T-H(フェライト)の3種類があります。
いずれも8インチ(20センチ)のコーン型フルレンジ。8Ω、特性50〜15,000Hz。
システムとしては L-33,L-44,L-54(トリムライン),L-75(メヌエット),D53(リブラ)など
があります。日本ではサンスイが自社箱入りで販売。
2.L-75(メヌエット)の鳴らし方
L-75 は小型の箱に LE8Tと PR8(パッシブラジエーター)を組み込んだもの。試聴室で
LE8T と LE8T-H 及び 2115(業務用)でユニットを交換しながら比較試聴。
使用装置:
カートリッジ :オルトフォンMC20,CG25D,シュアM3D,M7D,M8D,GEバリレラ
プレーヤ :トーレンス TD-184
管球アンプ :ALTEC1566+300Bシングル
トランス :DUKANE3A55、3A80A
レコード :ジャズ(ソニーロリンズ)モノラル盤/ プレスティッジレーベル
1)LE8T の場合(ライントランス有り):
アルニコの特徴であるホットな音色。ジャズによく合います。
MC20 は全く不適合。CG25D(昇圧なし)は SPU の音でも奥行き感がいまいち。
M3D はほぼ CG25D と同じ。M7D は生々しい音が飛び出して来る。
M8D は臨場感が出てきて M7D よりも生に近い。GEバリレラ は M7D に近い音も
迫力が劣ります。
2)LE8T-H の場合(ライントランス有り):
フェライトらしく上下の伸びがある半面ホットさがなく平坦な音色。
ジャズでは迫力がいまいち。各カートリッジは上記と同じ傾向ですがM7D もサックス
の吹き出すような音が出てこない。クラシックの室内楽には合うかもしれない。
3)LE8T の場合(ライントランスなし):
全般にライントランス有りと同じ傾向ですが、楽器の分離と奥行き感が薄れてきます。
サックスの飛び出し感が薄くなります。
4)2115 の場合(ライントランスなし):
JBL2115 は LE8Tのスタジオ用で仕様は全く同じ。20cm口径で16Ω仕様。
試聴室の JBL-L75のLE8T に付け替えて試聴しました。マグネットはアルニコで
一聴してLE8T との違いが判ります。音域が広がりサックス音の輝きが増して業務用
であるのが判ります。
カートリッジはシュア M7D が最適。小編成のジャズは大型スピーカーに近いライブ
感が出ます。クラシックもそこそこ聞けます。
'イルカ'の'ボヘミアの森から'の音場感は大型に劣りません。
3.LE8T の適応ソース
フルレンジスピーカーはダイナミックレンジが極端に違う 70 年代以降のステレオ
レコードには高低域、解像度不足となります。
おのずと 50 年代のソースが中心となります。
1)ジャズの再生
・LE8T で70年代以降のステレオのジャズを再生すると M7D,M8D では問題なく再生
しますがそれ以外のカートリッジではレコードが持つ本来の低域特性が再現できず
特に楽器編成が多いベイシーなどのフルバンドには対応できずダンゴとなります。
・50 年代のモノラルジャズなどは録音特性と再生特性が合っていれば大型システムに
優る迫力ある音になります。
・ボーカルはバックにオーケストラが多く低域不足による高域の粗が目立ちます。
バックがジャズバンドであればOK。
2)クラシックの再生
・70 年代以降のステレオのクラシック再生ではカートリッジで大幅に異なります。
最も合うのはシュアM8Dで臨場感もあり問題なし。その他のカートリッジは押しな
べて不適合。
・M8Dで再生すると交響曲、協奏曲などフルオーケストラの曲もそこそこ再生します。
楽器の定位はおのずと不明瞭ですがスピーカーの口径が小さい分、それなりにまと
まった音で聞けます。
アンプは真空管が絶対条件で近年のトランジスターアンプは合いません。音が安っぽく音場感が
出ない。カートリッジはシュア M3D、M7D、M8D がベストでその他とは一聴して違いが判る。
ライントランスを入れた音を聞くとトランスを外せなくなります。
それほどトランスの威力は絶大です。
レコードのレーベルの差も歴然とあり、米国プレスの’プレスティッジ,ブルーノート’が最高。
可能であればユニットを 2115 に付け替えると大幅にグレードアップします。
取付け方は LE8T と同じ。