ライントランス,トーレンス
ライントランス・トーレンス・オルトフォン・音工房


       トーレンス       SME 

B&W のスピーカーは以前から興味があり一度は聴いてみたいと思っていましたが、CM1 の評判が
良いので思い切って入手。マッチ箱のような大きさで良い音が出るはずがないとの思い込みがあり、
あまり期待してはいませんでしたが、これが驚き。

1.B&W CM1 の特徴

 マッチ箱のようなスピーカー。容積:
13 ℓ。
 試聴室のメインスピーカー容積:
370 の 約 1/30、JBL4301 容積:43 の 1/3.3です。

  形式:
2ウェイ2スピーカーバスレフ型 
  使用ユニット:
25mmメタルドーム・トゥイーター130mmケブラーコーン・ウーファー 
  再生周波数帯域:
45Hz~50KHz 
  出力音圧レベル:
84dB 
  公称インピーダンス:
Ω 
  クロスオーバー周波数:
4KHz 
  外形寸法:
165W×280H×276Bmm 
  質量:
6.7K

2.B&W CM1 の再生

  使用装置:
  スピーカー  :
B&W CM1+純正スタンド FS700
  カートリッジ :オルトフォンSPU-リファレンス,シュアM8D,GEバリレラ
  プレーヤー  :トーレンス TD-111、CD:WADIA-6
  管球アンプ  :
ALTEC1567+1570
  昇圧トランス :DUKANE3A55
  ライントランス:D
UKANE3A80A、JENSEN、WE111C
  フォノイコ  :
外付けMarantz7型
  レコード   :ビリーホリデイソニーロリンズアルビノーニシュトラウスバッハ他

 1)低域再生
   15 インチウーハーには及びませんが、想像を超える低域が再現されます。
   クラシックではオルガンの
40Hz の重低音は再生できませんが,50Hz 以上は再生。
   オルガンの量感もあり、ジャズのベースも弾まず生に近い再生が出来ます。

 2)高域再生
   欧州系の小型スピーカーに共通する奥行き感のない少しきつめの高域再生とは異なり音場
   感豊かな再生音。ピアノの再生は驚愕。弦の再生はかなりきつめに再生されます。
   トーンコントロールやトランスで調整する必要があります。

 3)音場感
   マッチ箱サイズからは想像できないような音場感があります。奥行き感はそれほどありま
   せんがそれなりの音場感です。
   アンプのボリュームを上げ過ぎると交響曲ではさすがに楽器の分離が出来ずダンゴ状態に
   なり、音場感が無くなります。
   
 4)カートリッジの選定   
   
カートリッジには敏感に反応しますので、音質の違いが如実に表れます。
   合う合わないが極端に出て、カートリッジによって天と地の差が出ます。
   レコードのレーベル、使用状態にも敏感に音質の違いが現れます。レコード選定が重要。

 5)アンプの選定
   スピーカーの特性からトランジスターアンプは音が硬くなりそう。管球アンプの倍音再生
   
が欠かせません。管球の選定が重要。出力の大きい方が相性が良いようです。


 6)ライントランスの効用

   WE111C(146K)JENSEN
DUKANE3A80Aでは音に艶が出てきます。
   弦の音が柔らかくなり刺激音が低減。低域は深みが増し高域の刺激音が無くなります。


 7)レコードの再生
   ビリーホリデイのボーカル(ステレオ)は古いにもかかわらずギター、ピアノ、サックス、
   ドラムのブラシが明確に再生。ボーカルも飛び出します。
   ソニーロリンズのサックスはライブを聴いているようで立体感があります。
   当然ですがツアラトストラの出だしの
30Hz のオルガン重低音は再生できません。
   アルビノーニのアダージオは絹の様な弦楽器が大型並みに再生されます。
   
カートリッジにより再生音はかなり変わってきます

   クラシックでは
ディジタル録音のレコードは音場感の崩れが出ないのでお勧めです。
   アナログ録音のレコードはフォルテッシモで音がダンゴになります。

 8)CD の再生
   
スリーデグリーズ、岩崎宏美、イルカ
のボーカルは演奏と分離して埋没することはなし。
   デユークエリントンも楽器の定位が明確で古さを感じません。中村八大のピアノは絶品。
   シューマン・ピアノ協奏曲はオーケストラの楽器がダンゴにならず定位も比較的明確。
   ピアノは埋没することは無し。
   ブルックナー
NO9 は出だしのフォルテッシモが崩れることなく再現。
   高域がきつめに再生されますのでアンプで調整する必要があります。または、
   ライントランスDUKANE3A80Aで高域の刺激音が無くなります。

3.セッティングの難しさ

 超小型のためセッティングには注意を要します。適当なものに乗せても能力は発揮できません。
 
JBL4301 の上に乗せて試聴すると中低域がおかしい。分解能が悪く’モヤモヤ’した感じ。
 純正のスタンドを購入してセッティングすると見違えるように鳴り出しました。

 1)純正のスタンド
FS700 を使う。CM1 はスタンド一体で設計されているようです。
 2)
CM1 とスタンドの間に黒檀(木製)のスペーサーを入れて浮かす。響きを出すため。
   スペーサーなしの方が中低音の量感が増す。
 3)後方、左右を物から
50 cm以上離す。低域の回り込みを無くす。
 4)スピーカーケーブルはウエスタンのブラックエネメル 20AWG ワイヤー使用。
 5)高域、低域で端子が分かれていて(バイアンプ式)専用のパネルで接続されているのを
   ウエスタンのブラックエネメル単線
20AWGワイヤーに変更。   
 6)エージングはかなりの日数を要します。

4.B&W CM1カートリッジの音質差

 1)シュア M3D(MM) の場合
   ウエスタンの特徴が現れて音が柔らかくなり音場感、特に奥行き感が増します。
   高域の硬さがうすらぎ聴きやすくなります。
   トランスでうまく調整すると見違えるように。見通しが良いモヤモヤ感が無い音に変身。

   
   WE111C(146K)JENSENDUKANE3A80A と組み合わせると音場感が
BEST
   
使う管球アンプによって組合わせるトランスも変わります
   カートリッジの特性で高域のきつさは無くなりますCM1M3Dは良く合います

   クラシックのピアノ協奏曲は臨場感がすごい。マッチ箱のようなスピーカーから
   出る音とは思えないほど。バックのオーケストラも楽器の定位が崩れません。
   アルビノーニのアダージョはあたかも夢の中にいるようです。
   ピアノソロもピアノのアタック音が明確に聞き取れます。クラシック再生は申し分ない。
   ビリーホリデイのボーカルもレコードの古さが感じられず、ボーカルとバックの演奏が
   かぶることが無く明確に分離しています。奥行き感が素晴らしい。

 
2)GE バリレラ(MM、VR22ステレオ)の場合
   シュア
M3D とは対照的な音質。中高域がクリアでよどんだところがありません。
   バリレラはジャズ・ボーカル専用のカートリッジでクラシックには合いません

   
弦の再生が苦手でホールの音場感が出ません。

   
WE111C(146K)JENSEN との組み合わせ
    中高域の再生が明確になりモヤモヤ感が無くなります。
    イルカの再生でバックの弦がきつくなり、ビリーホリデイでは逆にバックのバンド
    が明確になり音場感が増します。

   
DUKANE3A80A の組み合わせ
    DUKANE トランスの音場感が出てきて全般に聴きやすくなります。
    小編成ジャズではサックスの再生が秀逸で奥行き感が出ます。

 3)SPU-#1(MC) の場合
   ライントランスを使っても使わなくとも音場感があまり出てこない。
   
B&W のスピーカーとは相性が悪い。JBLとはよく合う。
   
B&W はカートリッジに敏感で SPU でもモデルによって相性が異なる例です。

 
4)SPU-マイスター(MC)の場合
   
WE111C(146K)、JENSEN の組合わせ
    
JENSEN では滑らかさが増します。
    
CM1 がカートリッジに敏感であるのが良くわかります。

    バッハのオルガンでは重低音が破綻することなく音場感を持って響きます。
    ピアノ協奏曲ではピアノがオーケストラに埋没せず前面に出てきます。
    シュアM3Dとは音場感でほぼ同じ。音の重心がやや違うのが特徴です。
    ビリーホリデイのボーカルもレコードの古さが感じられず、ボーカルとバックの演奏
    がかぶることが無く明確に分離しています。

 5)MC-20(MC) の場合
   
WE111C(146K)JENSEN との組み合わせ
    
MC-20 特有のやわらかさが特徴でクラシックでは B&W の中高温のきつさが全く出
    てきません。弦楽器の滑らかさと楽器の定位は特質。
    ピアノ協奏曲ではピアノが浮き出てオーケストラの音場感が出ます。

   
UKANE80 との組み合わせ
    
MC-20 特有のやわらかさが特徴でクラシックでは B&W の中高温のきつさが全く出
    てきません。弦楽器の滑らかさと楽器の定位は特質。
    
JENSEN よりは中域が太くなりピアノのアタック感が増します。
    弦は滑らかさを増し、オーケストラの迫力も増します。

   いずれもトーンコントロールの低域を上げていくとバッハのオルガンの重低音が音場感
   を持って目前に迫ってきます。中高域は柔らかくどこまでも伸び、低域は
JBL と違って
   適度に締まった音。この迫力は筆舌に尽くしがたい。
   ビリーホリデイのボーカルもレコードの古さが感じられず、ボーカルとバックの演奏が
   かぶることが無く明確に分離しています。
MC-20 は CM1 と最も合っています
   
MC-20 と M3D
バリレラで使い分けを推奨します

 
6)ライントランスの位置
   MCトランスを使う場合は必ず間にフォノイコを挟む。MCトランスと直結すると音が
   歪む場合があります。
   ライントランスはシステムによってその効果が変わります。