1.ALTECの特徴
ALTECの経営者ジェームス・B・ランシングはJBLの創始者でもありALTECは劇場用、JBLは
民生用と用途が分かれていました。
代表作にはALTEC(A5,A7)、JBL(パラゴン、ハーツフィールド)。ALTEC劇場用は音声
が中心で構造は2WAY,JBL民生用はジャズ再生が中心で構造は3WAY。
おのずとALTECは音声が遠くに届くように中域が盛り上がって、高域は鋭くなっています。
のちのALTEC民生用も基本は2WAYで音の傾向は変わっていません。
ALTECの特徴は
1)低域再生 :20〜38cm口径で沈み込む様な音。再生能力が高い。
2)中高域再生 :弦楽器音が鋭く聴き疲れする。クラシックには全く合わない。
3)音色は中域が前面に飛び出してきてジャズ、ボーカルには最適。
4)音場感はジャズでは最高。奥行き感は前方にあり、後方にはない。
「ALTEC最後のモデル’9862’(試聴室で使用)はJBLの4344を意識したもので4WAY。
音質は本来のALTECとは違いタンノイに近い音質。クラシック、ジャズ、ボーカル全てに対応可。」
2.ALTECの再生
使用装置
スピーカ: ALTECカーメル(ドライバー型)、ALTECコロナ(コーン型)各2WAY。
管球アンプ : ALTEC1566+ダイナコ・マークV(KT88)
プレーヤ: トーレンス TD-520
カートリッジ: SPU-GE、GEバリレラRPX
フォノイコ: 外付けMarantz7型
トランス: DUKANE3A55、WE-111C
ソース : ビング・クロスビー、カーメンマクレー、マイルスデヴィス、ソニーロリンズ
ジャズモノラル盤(プレスティッジ、ブルーノート)
1)低域再生
モデル 416、,414、406などは使いやすいウーハーです。JBLとは違い沈むような音質
で調整は必要ない。ジャズのベースも弾むことなく奥行き感のある音。中高域を邪魔することはあり
ません。
2)中高域再生
モデル 802、804、806,807のドライバー(1インチ)は音がかなり異なります。
802が最も特性がフラットでですが、これらのドライバーを狭い部屋で聞くとやはり堪えられない
ほど鮮烈になります。上記のシステムで’カーメル’はもてあまし処分しました。
コーン型のツイターはドライバーに比べ音が穏やかで聞きやすい音色。音の傾向は同じで使いやすい。
特にモノラル盤の再生では最高。楽器の定位が調整できればボーカルも他に類を見ないほどリアル
で声が前面に飛び出し、目前で歌っているようです。 ’サンタナ’、’コロナ’など.
ビッグバンドなど編成が大きいバンドは音がきつくなり聴き疲れしますので不可です。小編成の
ジャズに限ります。ボーカルでもバックがオーケストラは不可。ALTECのドライバー型、
コーン型いずれの中高域も弦楽器の再生が苦手でクラシックでは使えません。
3)音場感
小編成のジャズとボーカルに限ればステレオ盤、モノラル盤問わず最高の再生をします。
音場感は他のどのスピーカーも及ばず特有のもの。楽器の定位の調整が出来ればカーメン・
マックレーのボーカルも生々しい。
4)カートリッジの選定
MCのSPUマイスターでは特性が良すぎて相性が悪い。旧型のSPUがお勧め。
同年代のMMカートリッジの方が使いやすい。特性が良い近年のカートリッジはおしなべて
合わない。アンプスピーカーとの相性で機種を選定する必要があります。
レコード録音の年代で再生方法が異なります。
50年代 :帯域:30〜15KHz,ダイナミックレンジ:60db、モノラルが中心。
70年代以降:帯域:20〜20KHz,ダイナミックレンジ:98db、ステレオが中心。
詳細は’カートリッジの選定’を参照。
5)ライントランスの効用
ジャズ再生の理想形はウエスタン555の音です。 ’モノラルの再生’を参照。
ウエスタンの音は’いわゆる乾いた音’と言われますが、これがモノラルでもペットやサックスの
生々しい驚愕の音を再現しています。
比較的価格の安いWE-111Cはウエスタンの中でも特性がフラットで使いやすいライントランス
です。ウエスタンの音を出すには必須です。特にボーカルに使いたいトランスです。
ウエスタン系列のDUKANE、LangevinトランスでもOK。
ALTECのドライバーは使いこなしが難しくカートリッジの選定も困難。ライントランスを使って
これらを調整するのが必須です。
6)アンプの選定
アンプは真空管が適しています。近年のトランジスターアンプは合いません。音がきつくなって音域
のバランスが取れません。出力管はKT88、6L6GCが最適。
アンプは高域・低域のトーンコントロール付が必須です。